「試験に出るサウンドノベル2」
〜 弟切草編 〜


 はい、みんな静かにー。もう十二月です。「今年も残すところあと三百何十日」とか年明け早々に言っていた人もいるかと思いますが、本当にあと僅かになってしまいました。特に意味はないですが、とりあえず気を引き締めていきましょう。
 では、またしても特別授業として、サウンドノベルを元にした発想力テストを行います。え? あ……、はい、そうです、やっぱり先生の趣味です。どーもすいません。…こっちの方、笑って下さい。

 今日のテーマは「弟切草」です。ネタバレにもなりますのでプレイしていない人は見ない方がいいかも知れません。

 …よろしいですか?

 今日のテーマは、弟切草における「温室のガラス戸に書かれていた文字」です。かの伊集院光氏も絶賛する名場面ですね。
 時間は15分。君たち一人一人の独創性、考える力を身につけるための練習なので、思いついたものを自由に書いて下さい。数に制限はありません。ゲームをやってない人も、何か書いときゃ何とかなります。とりあえず、始め。

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 はい、そこまでー。では、ペーパーを回収して……と。はいはい。
 今から、先生が選んだ解答を黒板のテンプレート

ガラスのドアには大きく、赤く、「   」と書かれていた。

 に書き込んでいきますので、みんなであれこれ考えてみましょう。そうです、想像力と創造力です。なんだか聞こえのいい日本語ですね。では早速始めます。

ガラスのドアには大きく、赤く、「貞子」と書かれていた。
 これ、来るんじゃないかと思ってました。残念ながら、弟切草の館には井戸もテレビも無いので、どこから登場するのか興味深いです。しかし、この名前も日本ホラー界のスターダムにのし上がった感がありますよね。“成り上がり”ってやつですか。SADAKO、ヨロシク。

ガラスのドアには大きく、赤く、「奈美か!」と書かれていた。
 これも来るんじゃないかと思ってました。かなり浸透した感がありますからね。
 おそらくは妹との再会を待ちわびるナオミが書いたと思うんですが、ストレートに「お帰り」というのも照れくさい。違う人が来ちゃってもガッカリ。なので、とりあえずツッコミで探りを入れたわけです。ホントかー?
 先ほども言いましたが、あの屋敷にはテレビがありません。でも、今は違うのかも知れませんね。ナオミが薄型ワイドでバラエティを観ながらスマホで友達に「ウケる」とか言ってるのも、別の意味で怖いです。ありえなーい。

ガラスのドアには大きく、赤く、「空車」と書かれていた。
 なぁーんだ。車、あんな山道に乗り捨てて来るんじゃなかった。…あれっ? 乗り捨てて来たんじゃなくて壊れたんでしたっけ? まあ、どっちでもいいです。ところで、「空車」じゃなくて「空室」だと何となく気まずいですよね。ピンクしおりの一部にあってもおかしくないような。さて、休憩ですか宿泊ですか。

ガラスのドアには大きく、赤く、「後ろ後ろ」と書かれていた。
「奈美、後ろ後ろ!」
 僕の叫び声が届いたのか、奈美は後ろを振り返った。
 すると、奈美の後ろにいたヨロイが、突然姿を消した。(ちゃらりろん♪)
「なあに? 後ろって」
 奈美が、怪訝そうな顔で訊く。
「いや…。さっきまで、奈美の後ろにヨロイが…斧を持って…」
「夢でも見たんじゃないの?」

 実際ゲームに出てきそうな雰囲気ですが、いまいち怖くないのは何故でしょう。きっと最後、屋敷が焼け落ちる時に
♪ん、ちゃんちゃんちゃん ちゃんちゃかちゃんちゃん
 ちゃんちゃかちゃんちゃん ちゃんちゃかちゃん…
 という音楽とともに建物が回転して、小林幸子か由紀さおりが出てくるんでしょうね。

 ♪こーこーは山奥 弟切草の湯♪ 奈美、宿題やったか!頭洗えよ!また来週〜!!

ガラスのドアには大きく、赤く、「復習」と書かれていた。
●む。ナオミは小学生のころ漢字の書き取りが苦手であったが故に日記は誤字脱字だらけであり母さんが赤ペンで添削した跡が残されているのが実態。 30点/がんばり ましょう。

ガラスのドアには大きく、赤く、「別に…。」と書かれていた。
 うわ〜、ヤバいです。如何なる怪奇現象よりも背筋が凍り付きます。花言葉が「復讐」とかナオミの存在とか、可愛いもんです。 「奈美、本当は何か知ってるんじゃないか?」
「別に…。」 「わ…、わかった、わかった。い…今は…答えたくないんだな、そうだよな」
 怖いです怖いです。でも、あんまりこういうの書いてると「奈美会」から不幸の手紙(カ○ソリ入り)が来そうなので、この辺で止めておきます。

ガラスのドアには大きく、赤く、「差し押さえ」と書かれていた。
 おやまあ、大変です。ナオミが怪しい金融に手を付けたり、良からぬ企みがバレちゃったりしたんでしょうか。もしかすると甲冑とか水槽とか燭台とか、全部差し押さえ済みだったりして。
 でも物は考えようです。このまま二人で館にいれば、そのうち国税局の人達が車でお迎えに来てくれるという事に…なりませんかね。ダメですか。

ガラスのドアには大きく、赤く、「奈美、真犯人だった   可能性」と書かれていた。
 …東スポ読んでる人がいるみたいですね。結局、全ては奈美の企てだったと。もしこれが事実だとすれば、主人公にとってはナオミの存在なんかより大ショックで恐ろしい話です。

 同じ発想で、こういうのはどうでしょう。
奈美、宇宙人     一種の様式美です。他がやったら怒られる、東スポさんの専売特許。念押ししときますが、先生これリスペクトで書いてますので。ええ、たまに買ってますよ。

 …おや、こんなのを書いた人もいました。
奈美、新恋人発覚  か?  ところで、こういうネタにつきものなのは怪しげな事情通の存在ですが、やっぱりナオミなんでしょうかね。どうも、恐縮です。

ガラスのドアには大きく、赤く、「弟切荘」と書かれていた。

「主人公さん」
 誰かが僕を呼んだ。

「早かったじゃないですか。浪人…いえ、主人公さん」 「あれ? あなた、お姉ちゃんと知り合いなの?」 「し、知り合い…って…。えぇ!? いや…?
 知らないよ、全然、全然」
「なに言ってるんですか。さっき、新潟のご実家から電話がありましたよ。
 もうすぐそっちに着くからって。あと、届け物は部屋に運んでおきましたから」
「と、届け物…? 部屋…?」


 僕はわけがわからなかった。

「主人公く〜〜〜ん! 待ぁ〜ってました…というのは真っ赤なウソで、
 もう先に頂いてますよぉ〜〜。これはまた結構なお酒を」
「あっはは〜〜ん♪ 越乃寒梅に雪中梅、越乃景虎、八海山に久保田。
 あと、これ。見慣れない名前だけど、なんて読むの」
「菅名岳(すがなだけ)です」 「へぇ〜。すなだらけ」 「す・が・な・だ・け。菅名岳です」 「あはは、ごーめんゴメン。でも結構イケんじゃん、これ♪」 「なんだい、あたしに内緒で宴会なんて、主人公くんも水くさいねぇ。ほら、
 ナオミさんも一緒に飲みなよー。主人公くんの奢りだから。あはははー」
「いつ僕が奢るって言いました!」 「そ、そうですか…。それじゃ、お言葉に甘えて一杯だけ」 「はーい。じゃあ、ナオミさんも奈美ちゃんも揃ったところで、主人公くんの
 前途多難を祝して、かんぱーい!!」
「乾 杯っ!」 「かんぱぁ〜い」 「かんぱい。」 「かんぱーい」 「前途多難を祝ってどうすんですか!」 「ところで…、これからどんな困難が待ち受けているんですか?」 「知りませんよ! 長坂さんに聞いてください」 「かあちゃーん」 「なんだい賢太郎、まだ起きてたのかい?」 「越乃寒梅の空き瓶、銀座のクラブやスナックに持ってくと、一本
 二万円とかで買い取ってくれるって本当?」
「えぇーー!? これはいい話を聞いてしまいましたよ主人公くん。
 明日の夜はザギンでグーフーですね」
「アタシもアタシもー♪」 「ねー、なんで空き瓶なのに二万円で売れるの?」 「子供は知らなくていいんだよ〜。明日も学校だろ? 早く寝な。」 「なにヤバいこと教えてんですか。越乃寒梅は絶対数が少ないだけで、
 都会だと中間マージン featuring プレミアぼったくり価格になるんです。
 瓶が売れるってのは都市…いえ、田舎伝説ですから。
 それに、地元の人間は寒梅に拘らず、
 うまい酒を見つけてこっそり味わうのが楽しみなんです」
「しかし、物事はやってみないと判りません。私は主人公くんの社会勉強の
 お手伝いをさせて頂きたいのです。明日の夜、是非!」
「勉強、勉強」 「主人公さん、頑張ってくださいね」 「頑張れー。あはははー」 「頑張ってね」 「3_3 ばう」 「いつか…、こんなアパート出てってやる…」 「私は止めませんけど……、無事に脱出できるといいですね


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