「バーチャル三者会談」
− Yellow Magic Orchestraの場合 −
細
「前回の『テクノドン』は、あまりにもリスナーを突き放しちゃったと思うんですよ」
高
「昔の曲とか全然なしでしたからね」
坂
「ドームなのに」
細
「で、今回はサービスしてみようかと思いまして」
高
「ふんふん」
坂
「懐かしい響きですね」
細
「僕らも、一度原点に還らないと駄目なんじゃないかな、と」
高
「原点というと、どのような」
細
「徹底的な全国ツアーとか、どうでしょう」
坂
「テクノ行脚ですか」
細
「前にアッコちゃんが『ピアノ一台あれば、注文に応じて全国どこへでも』って
やってましたけど、ああいうのはどうですかね」
高
「でも…僕らの場合、本音でも建前でも電子楽器が要りますが」
坂
「じゃあ『コンセント(の差し込み口)一つあれば、全国どこへでも行きます』
というのは」
細
「いいですね、それ決まり。あと…全国を回るにしても、今まで以上の物を演らないと
サービスとは呼べないと思うんですよ」
坂
「『コンプリート・サーヴィス』よりもサーヴィスしちゃうんですか」
細
「ええ。折角やるんですから、リクエストにも応じつつ、日本全国津々浦々
180〜200本ぐらいの長旅を」
高
「昔のハウンド・ドッグみたいですね」
坂
「MCで『会いたかった、ぜぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇ』とか、
サーヴィスの一環と思えば、それはそれで」
細
「まぁ、提案しておいてナンですが、体力的な面での不安はありますけども」
高
「もう既に『弱気なぼくら』になってます」
坂
「200本だと、各都道府県・平均4回は演れちゃいますよね」
細
「ええ。どんなに小さなところでも大事にしたいんで、
『“渋谷公会堂みたいな公会堂”じゃない公会堂』も演りたいんですよ」
坂
「ご近所さんが会合に使ったりする、キャパ40人ぐらいで畳敷きの和風テイストな」
細
「正にそれです。お客さん全員、座布団に座ってる前でライブやるんです」
高
「途中でトイレに行く人、やたら目立ちますよ」
坂
「いきなり電話が鳴って、取った人が『岡田さーん、家から電話ですー』とか」
高
「微妙なライブですね」
細
「今は携帯の時代じゃないですか」
坂
「ご年配の方だと、持っていない可能性もありますから」
細
「なるほど。それから、以前にも演ってました『TECHNOPOLIS』のご当地版は、
より一層その地域に根差したローカルなもので」
高
「バージョンアップしますか」
細
「取り敢えず、思いつきで」
坂
「根室」
高
「ねむろ
ねむろ
ちゃーーちゃちゃーーちゃ ちゃーーちゃちゃーーちゃ
T - E - C - H - N - O - P - O - L - I - S ・・ねむろ
みたいな感じですか」
細
「幅広い年代層に聴いて欲しいんで、巣鴨とか」
坂
「すがも
すがも
ちゃーーちゃちゃーーちゃ ちゃーーちゃちゃーーちゃ
T - E - C - H - N - O - P - O - L - I - S ・・すがも」
高
「御利益ありそうですね」
細
「お爺ちゃん・お婆ちゃんのハートをがっちりキャッチですよ」
坂
「あー、言葉的に面白そうなのがありました」
高
「どこですか」
坂
「三重県の県庁所在地」
高
「『津』でしたっけ」
細
「つ
つ
ちゃーーちゃちゃーーちゃ ちゃーーちゃちゃーーちゃ
T - E - C - H - N - O - P - O - L - I - S ・・つ」
高
「ある意味サービスな気もしますね」
細
「まあ異論はあるかと思いますが、こういう方向で進めましょう。
もう一つ、ツアータイトルをどうするか、なんですが」
坂
「コンプリートを越えるなら『アルティメット・サーヴィス』で」
細
「なんとなく強そうな響きですね」
高
「総合格闘技のような」
細
「あ、それとですね、いくら小規模でも我々三人だけじゃ心許ないんで、
誰かサポートをお願いしたいんですよ」
坂
「やっぱり松武(秀樹)さんですか」
高
「今の松武さんの活動を考えると、長期の拘束は無理だと思うんですが」
細
「じゃあ、他の人に頼みましょう。丁度、腕の立つ知り合いがいまして」
坂
「それは初耳ですね」
高
「なんて人ですか」
細
「“シメジさん”っていうんですけど」
坂
「ネタじゃないでしょうね、それ」
細
「ネタです(笑)」
高
「でも、新鮮な響きですね。“シメジさん”」
坂
「松武さんが山に生えている本物だとすると、シメジさんは
永谷園のお吸い物みたいな存在に感じられるんですが」
細
「いや、アレですよ。『香り松茸・味しめじ』って言うじゃないですか」
高
「大事なのは味ですね」
坂
「ですね」
細
「そんなこんなで、今日のところは散開しましょう」
高
「…マイタケさんって人も結構イケてるんじゃないかと思うんですが」
細
「まだ言ってますか(笑)」
※この文章はフィクションです。