1999年10月さいしょの秋風もすずしげな夜


 なんだかわけのわからないうちに研究所が移転してしまいました。いままで住みなれた研究室を離れるのはさみしいものです……。ところで引っ越しの時に荷物をまとめていたらなにやら妙なものが出てきました。一枚の写真なのですが子供がひとり写っています。

「所長〜しょちょう〜どこにいるですか〜」
「ムホン。何かねへのいち君」
「あのー引っ越しのときに荷物をかたずけてたら変な写真がでてきたですけど
  これに見おぼえはないですか」
「う、うむむ……」
「男の子みたいですけど……なんだかしかめっ面してて
  全然かわいくないですね」
ワシ。
「は?わしがどうかしたですか?」
「ワシじゃ。この写真に写っている
  『しかめっ面してて全然かわいくない男の子』とはワシの姿なのじゃ!
「あ、あわわわ……そうだったですかぁなーんだ言われてみると
  どことなく知性的というか気品のようなものが感じられるですね」
「おだててももう遅いわい。この写真はな、トップページに密かに忍ばせておいた
  ワシの貴重な古い写真なのじゃ」

 これはビックリです。
 あのカタブツな所長にも幼年期なるものがあったとはおどろきもものき坂井真紀。でもやっぱりかわいげのないところは昔っから……

何か言ったか
「いいえいえいえいえなんでもありませんなんでも」

 もう所長ったら神出鬼没なんだからコワイコワイ。
 みなさんも気が向いたらトップページに隠された所長の写真をさがしてみてください。


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1999年9月あたまの曇りがちな夜


 7月の6日に所長が再び入院してからはやいもので2ヶ月がすぎました。
 予定では今日あたり退院してくるはずですが……。

「やあやあへの1号君、ふた月も研究所を留守にしてすまなかった。」
「あれあれ所長、もうからだのほうはだいじょうぶなんですか不安が心配ですよ」
「うむ。一時期の痛みもずいぶんとやわらいでおるしの。
  まあぼちぼちといったところじゃ」
「所長に言われたとおり『なりきり君』も運用を再開しておきました」
「そうか、それはなによりじゃな。だが今年6月のようにあまりハードな運用は
  してはならんぞ。またシステムがダウンしては元も子もないからな」
「そうですね……ではこれから『なりきり君』をリサーチモードに切り替えて
  新曲にそなえて準備しますので期待してまっててください」
「“そなえて準備、期待して待つ”か。君の日本語も相変わらず進歩しとらんな。
  ところでカーミット君はどうしておるのかね?」
「カーミットさんならついに実家からトレンチコートがおくられてきたといって
  おおよろこびしてたですけど」
「よし。我が精鋭なる部隊が揃ったな……とは言っても約2名じゃが……。
  さしあたり年末に向けてほどほどに運営していくのでよろしく頼むぞ」

 所長も帰ってきたしカーミットさんも戦線復帰。またよからぬことがなければ
 いいのですが……だいじょうぶかな。


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1999年6月もなかばの蒸し暑い夜


 今日ぼくはレンタルCDで借りてきた600万枚売れたとかいうはやりのCDをノリノリで聞いていました。

「おい、への1号君」
「なんですか所長〜ぼくは今楽しいひとときをすごしてるです
  じゃましないでくださいよ」
「それじゃ。それが問題なのじゃ。キミが今聞いておる曲は何かね。
  ただの黒人音楽の猿真似に過ぎんではないか。何でこの日本で
  これほど売れておるのか…。ワシにはさっぱりわからん」
「いいじゃないですか所長。ぼくはこう見えても流行にはびんかんなんですよ」
「うう……イカンイカン!うら若き少女がホレたのハレたの抜かしおってからに!
  やはり若いうちは苦労が必要じゃ。『15、16、17と 私の人生暗かった』
  いいかね、これが大切なのだ」
「なんだか所長やけに古い事を言い出しますねトシがバレますよ」
「ならばそのCDを貸してみたまえ。『なりきり君』がどう答えを出すのか
  見てみようではないか」
「ああーっ所長、それは借り物のCDですよ
  それに『なりきり君』に変なデータを入力したらどうなっても知りませんよ」

 ……あらら、せっかくの「ヒカル」が大変なものに化けてしまいました。あああ〜〜っ!! しかも「なりきり君」たら借り物のCDを勝手に書き換えちゃって!!!こんなの返すに返せません。どうしよ……


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1999年6月もはじめの日曜日の夕暮れ


 今日は所長がおでかけ、カーミットさんはイカの干物食って腹いたなのでお休み、研究所はぼくひとりです。ふっふっふ。今日はぼくが「なりきり君」について大いに語ってみたいと思うです。

〜多くの謎に隠された「なりきり君」の正体とは?白日の元にさらされるその素顔〜

「なりきり君」を制御するのは IMG-4989_55GHz というぼくが独自に開発したマイクロチップです。このチップは入力情報となるCDやテレビ番組を読み込ませるとものすごいいきおいでリサーチを開始するです。
 「なりきり君」のリサーチ能力はあの「特命リサーチ200X」のファー・イースト・リサーチ社のスパコンがほこる情報収集能力をも上回ると言われて……みたいなぁとか思ってるです。そして独自のアルゴリズムにより歌詞と曲を生成しますがこれについてはトップシークレットなのでくわしくは言えませんごめんなさい。

 うっひっひ…だれも見ていません。所長には運用をほどほどにしろと言われていましたが隠れてこっそりスイッチをいれます。今日は今までやったことがなかった「著作権」のパラメータをめいいっぱい上げてみましょう。えーと、入力情報は今ちょうどやってる国民的人気アニメにしてみます。

 (5分経過)

 うぅ…なんだかとてもヤバいものができてしまいました。とりあえず「なりきり君」のコーナーに発表してみましたがなんだか危険があぶない気がします。もし苦情がきたらきっと所長は怒るんだろうな…そん時ゃ「なりきり君」のせいにしちゃえ。
 ぼくは所長に見つからないうちにとりあえず逃げます!ほとぼりがさめたころにまた
かえってきますので今日のところははさようなら!


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1999年6月もはじめの天気のわるい朝


 「なりきり君」が4日間の長い沈黙をやぶり、またしても1曲生成しました。
 なんかぼくにはよくわからないのですが「夢は叶います」とかなんとかいうグループのデータを入力したらあっという間に曲を生成してくれました。でもなんかようすがちょっと変です「なりきり君」にさわると熱いんですもしかしてこれはオーバーヒートでしょうか…だとしたら少し休ませてあげなくてはいけないと思います。まんがいち熱暴走でもおこされたら大変です。

「どうしたヘの1号、顔色がよくないぞ。こないだのワシの説法が効きすぎたか」
「いえいえそうじゃなくてそれが所長大変なんです聞いてくださいよ
 『なりきり君』がオーバーヒートしてるんです」
「そうか…『なりきり君』はここのところ働き詰めだったからな。
  すこしはマシンをいたわってあげてはどうかの?」
「そうですね所長。ぼくもちょっと『なりきり君』にたよりすぎていた気もしますし…
  なにごともほどほどが大事なんですね」
「そうじゃな。人間も機械も、働く時は働く、休む時には休まねばならん。
  くれぐれも使いすぎて『なりきり君』を壊さん程度に頼むぞ」

 「なりきり君」にもお休みがひつようなんですね、なんだか人間みたいで親しみが持てます。これからは2〜3週間に一度ぐらいのペースでのんびりと運用していきたいと思うので期待してくれている皆さんどうかよろしくお願いするです。


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1999年5月の風もさわやかな午後


 所長にほめられて気をよくしたぼくは今日も「なりきり君」をいじっていました。

「やあやあヘの1号君、『なりきり君』は順調に動いとるかね?」
「はいおかげさまで順調ですまた今日も1曲できましたので発表しておきました」
「そうか。それはなによりじゃ…。
  ん?ところで聞くが、『なりきり君』に付いとるこのツマミは何じゃ?」
「ああーっ!ダメです所長!勝手にいじっちゃ。ぼくもまだ使い方が
  よくわかってないんですから。このツマミは『著作権』のパラメータで、
  上げれば上げるほどオリジナルに曲が似ていくんですが、上げすぎると
  J○S○ACから苦情がきて大変なんですだからむやみにいじらないでくださいよ」
「『著作権』とはこれまたいかがわしいパラメータじゃな。
  インチキ・ミュージック・ジェネレータにはピッタリじゃ」
「だーかーらーインチキじゃなくてインテリジェントだって
  言ってるじゃないですかひどいなあもう」

 どうも所長はぼくのことを信用してないみたいですくやしいです。いつかもっとすごいシステムをつくって所長をギャフンと言わせてやりたいですでも人間、おどろいた時に「ギャフン」と言う人はいませんよねトホホ。と、とにかく研究を続けたいと思いますがんばります。


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1999年5月のちょっとだけ暑い夜


 ついに、ついに悲願念願大願だった人工知能システムが稼動しはじめましたうれしいですとてもうれしいですでも1年2ヶ月もかかりましたごめんなさい。ぼくはこの人工知能システムに名前をつけてあげました。『 I. M. G 』インテリジェント・ミュージック・ジェネレータの略ですがめんどくさいので結局「なりきり君」とあだ名で呼んでいますみなさんもぜひかわいがってやってくださいよろしくおねがいします。

「への1号、遂にやり遂げたな。ワシは嬉しいぞ。これで我が研究所の未来も
  明るいものとなるであろう」
「ありがとうございますこれもみんな所長の差し入れとカーミットさんの
  おみやげあってのものですうれしいです」
「しかしナンだな…『 I. M. G 』とな…?
  ワシには『インチキ・ミュージック・ジェネレータ』にしか思えんのじゃが」
「うぅ所長なんだか痛いところを突きますねいじめないで下さいよ
  せっかく作ったんですから」
「まあとりあえず今日のところは褒めておこう。
  だがこれにうぬぼれることなく研究に励んでくれたまえ」

 …なんだか褒められてんだかけなされてんだかわかりませんでもこれからもいっしょうけんめい研究をつづけるのでおうえんよろしくおねがいするです。


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