世にもビミョーな物語 3頁 No. 021〜030

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  1. NTT職員の悲哀 2000/10/09
  2. 病院だよおっ母さん 2000/10/19
  3. 絶叫ボロアパート 2000/10/30
  4. 北半球・南半球 2000/11/02
  5. 俺の父ちゃん、Out Run 2000/11/15
  6. 電波にまつわるエトセトラ 2000/11/23
  7. パクリとオリジナル 2000/12/02
  8. 日本語音楽の行方 2000/12/10
  9. ハゲ保険 2000/12/20
  10. 聖なる夜に納豆食って 2000/12/23

NTT職員の悲哀


 関東・関西地区などの一部で、インターネットへの常時接続が可能になる「フレッツ・ISDN」というサービスが始まった。ワシも今まではずいぶんと高い電話料金を払ってきたので、切実な思いで8月の中旬、NTTへ申し込み書類を送った。

 ところが、一ヶ月がとうに過ぎても音沙汰がない。知り合いの話などでも、このサービスには申し込みが殺到していて処理が追いついていないのだそうだが、いくらなんでも一ヶ月というのは…。連絡がこない怒りというよりも、本当に処理は行われているのかという不安が先立ち、ワシはNTTへ電話をかけた。その電話は自動応答メッセージ式で、名前と電話番号を言えば、後日、折り返し連絡が来るとのことであった。

 しかし。それからさらに半月が経っても、なんの連絡もない。ワシはいい加減頭にきたので、フレッツの問い合わせ番号へ苦情の電話をかけた。そもそも、この電話自体が何十分も待たされてようやくつながるという酷さだったのだが。

 さて、電話に出たのは、二十代半ばといった感じの声の男性。話によれば、「お客様(ワシ)の回線は、電話局内の機械の問題で処理が遅れてしまいました」とのこと。なんだか言いわけがましかったが、本当にそうなら仕方がない。ワシは一応納得した。

 だが、自動応答メッセージに入れたはずの連絡が一切来なかった事について言及したところ、いきなり彼の応対が、しどろもどろになった。電話口からも、彼があせっている様子が伝わってきた。あまりにも曖昧な態度に業を煮やしたワシは少し強い口調で、連絡が来なかった事を責めた。

 すると。
 …彼の声が震えだした。最初は、怒っているのか?とも思ったのだが、なんだかおかしい。
「しょ、少々お待ち下さい…」そういうと、彼は一旦電話を保留にした。さらに数十秒。
「その件に…関しましては、誠にこちらの一方的なミ…に…よ… の…… して… しょ、少々お待ち下さい…」また彼は、電話を保留にした。

 「お待たせ…しました」。ワシは気づいた。彼は、声をしゃくり上げているのだ。怒っているのではなかった。きっと彼は局内でも下っ端かアルバイトで、本当に彼には何の責任もなく、上層部が作ったマニュアル通りに苦情の対応をしていたのだろう。なんだかワシは、彼が可哀想になってきた。

ワシ「じゃあ、わかりました。16日に開通という事でいいんですね?」
職員「…はい。本当に………すびばせんでした

 NTTさんよ。あれだけ高い電話料金を徴収して、それなりに儲かっているのなら、お金をかけるべき所をもう少し考えてみてはくれないだろうか。サービスが殺到するのがわかっているなら、あらかじめ職員を数多く配置しておくとか。そうでないと、彼のような悲劇が今日もどこかで起きてしまうぞ。担当のMさん、ごめんね。悪気はなかったのだよ。


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病院だよおっ母さん


 あれは、13日の金曜日のこと。
 ワシは昼食を職場近くの定食屋で済ませ、午後の仕事に取りかかっていた。2時を過ぎた頃、突然お腹がキリキリと痛くなってきた。便意ともちょっと違う。基本的にワシは胃が丈夫な人間なので、珍しい事もあるものだなぁ程度にしか考えていなかった。

 10分後、今度は本格的な便意が襲ってきた。慌ててトイレに行く。なんだかお腹を壊しているような感じだった。が、お尻の感触が変だ。気になったので、ワシは何気なく便器をのぞいた。…そこは血の海だった。もう、ちょっとやそっとの出血ではなく、便器の中が真っ赤に染まっていた。
 さらに10分後。またしてもトイレに行った。…やっぱり血の海だった。不安になったワシは職場の人に事情を話し、早退して飛んで帰り、近所の病院へ駆け込んだ。

 診察室にて。

 ワシの話を聞いていた先生の表情が、見る見るこわばっていく。ワシが全てを話し終えると、先生は看護婦さんと顔を見合わせて、苦笑い。な、なんなんだ、一体。
「“急性出血性大腸炎”の疑いがあります。今から緊急で内視鏡の検査をしますので、検査室へお願いします」
 ま、待ってくれ。急性なんちゃら炎…って、なんだ。ワシは不安にかられながら、看護婦さんのあとをついていった。

 妙な服に着替えさせられ、浣腸が行われる。
「このベッドに、頭をこちらにして横向きに寝て下さい」もう、まな板の上の鯉状態だ。
「じゃあ、今から内視鏡入れますね。楽にしていて下さい。中の映像が、このモニタに出ますので見ていて下さい」

 検査が始まったが、どうもおかしな展開になってきた。
「ここが、S字結腸です。ちょっと通りにくいですが、我慢して下さいね」
「ここが、虫垂です。盲腸炎の時に切るやつです」
「ここが、小腸と大腸の境い目です」

 …なんだかワシは、観光地めぐりをしている気分になってきた。それに、言っている事はかなり気持ち悪いものだが、なんだか先生、楽しそう。ワシの気のせいだろうか。

「ほら、ここ。青白くなっているでしょう。これ、肝臓が透けて見えてるんですよ。一応、写真撮りましょうね」

 あのー。先生、あんたは島倉千代子ですか!? ワシは、内蔵をえぐられる不快感に顔を歪めながら、心の中でツッコミを入れた。

 結果、大腸には何の異常も認められず、おそらくは常用していた坐薬(鎮痛剤)によって肛門部分が傷ついてしまったのでしょうという事だった。
「まあ、“ぢ”でしょう。とりあえず軟膏を出しておきますね」

 …はあ、“痔”ですか。なあんだ。心配して大損した。それにしても、いい歳して「痔」か。なんとも情けなや。秋風がやけに冷たい、夕暮れの事だった。


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絶叫ボロアパート


 椎名林檎のニューアルバム……ではない。
 ワシの住むアパートは、木造二階建てで、あまりしっかりした造りではない。どちらかと言えば、安普請(やすぶしん)な部類に入ると思う。となると当然、壁が薄いわけで、大声を出したり大音量で音楽を聞いたりすれば、隣に音が漏れる。

 あれは1993年後半の、サッカー・ワールドカップ予選の頃。日本は、アジア地区最終予選でイランに勝てば予選を突破できるという状況であった。結果的には「ドーハの悲劇」という真夜中の落胆になってしまうのだが。日本イレブンは、苦戦を強いられていた。もう、見ているこちらはヒヤヒヤさせられっ放し。選手の闘いと同様、ワシのアパートも、熱かった。

 日本の選手がシュートを放てば、上の階から「ウォ〜〜ッ!」。ピンチになると、隣の部屋から「ああっ!バカッ!」。それこそ日本に得点がもたらされると「よっしゃ〜〜っ!!」という具合に、サラウンド状態でサッカーを楽しむ事が出来た。もっとも、ワシ自身も絶叫していた一人だったのだが。

 今回のシドニー五輪も、やっぱり熱かった。中村のフリーキックが放たれると、「オ〜〜〜ッ!」。シュートが外れると「ア〜〜〜ッ!」。上の階の住人は、いい感じのシュートが外れた時には床を踏みならして悔しがっていた。

 おかしかったのは、一時期ワシの隣の部屋にキムさんという韓国人の青年が住んでいた時のことだ。日韓戦は、いやがおうにも白熱する。あちらがチャンスならこちらがピンチ、こちらがチャンスならあちらがピンチなので、もうお互いが壁をはさんで絶叫しっ放し。
 今思えば、ワシがキムさんの部屋にお邪魔するか、キムさんをワシの部屋に招いて、一緒にサッカーを観てもよかったのではないか。日本語は達者だったし、お隣の国の人とテレビひとつで出来る国際交流。

 想像したのだが、隣の住人が韓国人だからまだ良かったのかも知れない。これが、まかり間違ってブラジル人やスペイン人なんかが住んでいたら、もう絶叫どころでは済まされないような気がする。あなたの隣にはいないだろうか?そんな人。きっと、サッカーを見るのがより一層、楽しくなると思うのだが(無責任)。


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北半球・南半球


 ワシは若かりし頃、とあるコンピュータ関係の仕事をしていた。その2年目。会社が設立10周年だという記念で、社員旅行で羽振りよくオーストラリアへ行ける事となった。ワシは何度か海外旅行を経験しているが、南半球へ行くというのは初めてだった。

 夜行便でケアンズへ飛び、早朝、ホテルへチェック・イン。さて、ここでクイズ。ワシはホテルで最初に何をしたでしょう? ・・・・・ヒント「水」・・・・・。
 正解は、「洗面所で水を溜め、それを流した」のである。なんでこんな事をするのか、おわかりだろうか。

 天気予報を見ているとわかるが、北半球では低気圧は反時計回りに渦を巻く。洗面所でも風呂場でも、栓を抜けば反時計回りに水は流れ落ちていく。南半球では、これが逆になるのだ。物理的な話は苦手なので省くが、とにかくそういう理由で、ワシはこの目でそれを確かめたかったのだ。

 ケアンズのホテルの洗面所で、ワシは一人で興奮していた。「ほ、ほんとだよ!時計回りに水が流れてるよ!!」…同室の先輩が、妙な目でワシを見ていた。

 その夜の風呂でも同様に試してみるが、やはりここは南半球。水は時計回りに流れていく。…ん?ワシは、ふと疑問を感じた。「北半球は反時計回り、南半球は時計回り、なら、赤道の真上ではどうなるのだろう?」と。

 北緯0度0分0秒。赤道上において、洗面所の水は、どのように流れ落ちていくのか。ワシは思った。おそらく、こうなるのではないか。

ぐるぐる

 おわかりいただけたであろうか。そう、ここは「北半球」でも「南半球」でもない、「ウルトラQ」なのだ。う、うぅ…我ながら寒いオチであった。また次回。


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俺の父ちゃん、Out Run


 ワシは、免許がない。取りたいけど取れない訳でもなく、取ろうとしたけど取れなかった訳でもなく、最初から取る気がないのだ。要因は、ワシの幼児期から青春時代までの体験にある。

 ワシの実家から、隣町にあるおばあちゃんの家へ行くのに、ちょっとした山を越えて行かなくてはならない。現在では山が切り開かれて立派な舗装道路が出来ているが、ワシが幼かった頃は、死ぬほど曲がりくねった砂利道で、それはそれは不快なものだった。おまけに当時は、ろくな整備もされておらず、この道を一歩踏み外せば、崖下へ真っ逆さまだったのだ(…と、ワシは記憶しておるが、実際はどうだったのだろうか)。
 そんな悪路をワシの父上は、“ドリキン”土屋某氏がごとく、右へ左へハンドル切りまくり。スピードも出しまくり。もう何度も吐きそうになる。幼いワシにとって、おばあちゃんの家に行くのは、楽しみでもあり、恐怖でもあった。

 さらに、冬場もそれはそれで怖い。ワシの実家の近辺は田んぼだらけで、2km先まで同じ景色の農村地帯だ。そんな田舎の一本道、ブリザードで視界は数メートルという状況の中、父上は飛ばす飛ばす。時速何キロか、ここで書いてしまったらヤバいぐらい飛ばす。しかも車は前輪駆動だ。凍ってツルツルの路面を走っていると、車のお尻は右へ左へ流れまくり。

 単に“飛ばす”というのも怖いが、状況によっては、その怖さは倍増する。
 ワシが中学の頃、少々遠い街にある大病院へ通うことになった。ここでまたしても父上の登場だが、父上は近道や抜け道が大好きだ。交通量が多く、信号のたびに渋滞してしまう大きな道をノロノロと行くぐらいなら、狭い抜け道をサクサク走る方がいいと思っている。

 病院への道中、川沿いの土手を降り、ちょっとした住宅地を抜けていくのが父上のルートであった。が、そこは通学路。道幅は、車2台がどうにかすれ違える程度の細い道路なのだ。ワシは根っからの心配性であるが故に、「もしもいきなり対向車が現れたらどうしよう…?」とか、「脇道から子供が飛び出して来たらどうしよう…?」とか、頭の中は真っ黒い不安が渦巻く。

 幸いにもワシの父上は、ぶつけられた経験はあっても、ぶつけた経験はない。そんな自信からか、通学路でも容赦なく飛ばしてくださる。ワシの恐怖は最高潮、父上の興奮も最高潮…だったかも。

 とにかく、これはゲームではなく現実だ。「子供が飛び出してきました」「轢(ひ)きました」「死にました」「GAME OVER」では済まされない。
 だが、父上の車に乗っていると、フロントグラスの左上にハイスコアと残機でも出てきそうな雰囲気なのだ。

 …そんなこんなで、ワシは免許が取りたくなくなってしもうた。同じ血が流れている家族の事だ。もし免許を取ったら、ワシもきっと飛ばす。人格も変わってしまうかも知れん。そして、ワシには妙な確信がある。「免許を取ったら、いつか人を轢いてしまう」。家族にこの事を話しても、一笑に付されてしまうのだが、これはワシの本心だ。

 頼む、父上。人生にコンティニューは効かないのだ。もうちょっと安全運転を心がけて頂きたい………って、ここ、読んでないか。


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電波にまつわるエトセトラ


 無線マニアという人間は、意外と多いらしい。その筋では有名な「ラジオライフ」などの雑誌を読めば、彼らの無線に対する熱い思いが伝わってくる。
 無線の楽しみ方と言えば、人と人とのコミュニケーションにとどまらず、警察無線(現在ではデジタル化されてしまったので聞けない)、鉄道無線、火事・救急などの防災無線を傍受するというものもあったりする。

 そんな中でも、ワシがこれは面白そうだと思ったものが、“コンサート会場でのワイヤレスマイクの傍受”だ。昨今、大会場のコンサートでは、アーティストがワイヤレスマイクで歌うのが一般的である。ボーカリストだけでなく、ギタリスト、ベーシストなども、トランスミッターという送信機を使えば自由に動き回れるので、多くの人がワイヤレスシステムを使っている。で、無線マニアはライブ会場の近くに陣取り、これらの電波を傍受して楽しむのだ。

 最初にこれを考えた人は凄いと思う。考えてみて頂きたい。普通、コンサートでは、ボーカリストの歌声を手持ちのマイクが受け取り、それをマイク一体型のトランスミッターで飛ばし、それをレシーバーで受け取り、コンプレッサーやイコライザー、ディレイなどの様々な機械で加工されて観客の耳に届く。
 ところが、マイクから出た電波をじかに傍受するというのは、本当の生の歌声を聞けるという事なのだ。そのアーティストのマニアにとってはたまらないものだろう。

 「口(くち)パク」という言葉をご存じだろうか。アーティストが自分の生の声で歌わず、あらかじめ録音されたテープなどで歌を流し、歌っているフリをするのが「口パク」だ。コンサートで見ている分にはわからなくとも、ワイヤレスマイクを傍受していれば、歌っているかいないかは一発でバレてしまう。

 無線マニアの話だと、結構この口パクをやっているアーティストは多いらしい。誰とは言わないが、大規模な舞台装置(プールなんかもあるとか)で、派手な演出を行なっている事で有名な大物女性シンガーソングライター、Y・Mさんなどがそうだという。

 ところがだ。後日、ある事を知った。その大規模なコンサートでは、Yさんはヘッドセットマイクをつけて黒系のコスチュームを身にまとい、5〜6人のプロフェッショナルなダンサーの人たちと一緒に踊っている。傍受した人によれば、ダンスをしながら歌っているはずの時は、荒い息づかいしか聞こえなかったという。それは、視覚的な演出を優先させた結果で、お客さんを欺くためではない口パクだと思う。

 じゃあ、ライブまるごと口パクなのか? という疑問も湧くが、M任谷さんはそれで終わらせたりしない。ライブの途中で、お客さんからのリクエストを受けて歌うコーナーがあるらしく、その歌声たるや、本当に本当の松任谷由実そのものだという。…って、結局名前書いてるじゃんか、ワシ。
 あの人が、お客さんまで仕込みを入れて、さらに口パクなんかやらないと思う。これらを教えてくれたのは、ある雑誌か何かに載っていた、無線マニアの体験談だった。

 ちなみに書くが、無線の傍受は違法ではない。傍受した内容をふれ回ったり、それを元に脅迫したりすれば、もちろん両手が後ろに回る事になるが。それでもやはり、やっている事が事だけに、アーティスト側も神経質になる。コンサート会場の近くで、怪しい機械を持って歩いていたり、妙なアンテナを伸ばしていたりすると、怖〜いお兄さんがやってきて怖〜い目に遭うのだとか。

 言っておくが、このコラムで得た知識を元に悪事を働かないように。ワシは、一切の責任を負いかねるので念のため。おねがい。


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パクリとオリジナル


 ワシが尊敬する松本孝弘さんと、稲葉さんのB'zをはじめ、数多くのミュージシャン達が所属する、ビーイングという音楽事務所・レーベルがある。

 初めてZARDの「負けないで」を聞いた時、「ダリル・ホールの『DREAMTIME』じゃんか」と思った。これを書いたのは、ビーイングの超強力なブレーンとも呼べる織田哲郎さん。
 織田さんは、かつて自らがボーカルとギターを取るバンドを結成し、後にTM Networkに関わる北島健二さんらと活動を行っていた。北島さんも、バカウマギターだ。大御所スタジオミュージシャン。中島みゆきさんだろうが誰さんだろうが、呼ばれたら仕事きっちりのお方だ。

 その後、織田さんはソロ活動も行いつつ、冬はずっと冬眠しているらしいTUBEを手がけ、世に送り出す。相川七瀬さんも手がけ、ご自身も部分的にギターを弾いていると思う。そうでなくても、スタッフに全てを指示して、それを統括している現場監督だ。それ以外で有名なのは「踊るポンポコリン」の作曲など。
 なのでワシは「あーああ、まったくこの人は………」と、面白くて笑った。

 ある日本人アーティストが、音楽雑誌のインタビューで語っていた。「コードとメロディの組み合わせなんて、1960年代にビートルズがやり尽くしてしまったよ」と。ワシも昔は、やれ「パクりだパクりだ!」と、大人げない事を叫んでいたが、ようやくその幼児性に気づき、恥ずかしくなった。

 本当の意味での“オリジナル・ソング”とは何か。
 楽器をやったり、歌を歌う人間は、みんな誰かしらに憧れてコピーしたり、好きなフレーズを必死になって練習する。そして、憧れて憧れて、苦労の末ようやくプロになり、売れた時に、やっと好きな事がやれる。

 ドリカムがよく、E,W&Fのパクりだと言われるが、あの人達は、リアルタイムでアースを聞き、毎晩あちこちのディスコで踊っていただろう。そして、「あー、やっぱアース気持ちいい!『レッツ・グルーヴ』大好き!うれしい!楽しい!」と思い、先ず自分たちが楽しんで、その楽しさをもっと沢山の人にも伝えたくて、楽曲を創っているのだろう。昨今の80年代洋楽ブームも、そういう人達のおかげだと思う。

 だから、どんなに既存の曲に似ていても、同じフレーズが出てきても、ポリシーを持ってやっているのならば、それに文句は言えないと思う。もし本家から訴訟されて、本当に著作権に抵触していたならば、捕まっているだろうからだ。

 ワシの「とっておき」の方にも、何かによく似た曲は沢山ある。ワシも、わかっておる。ワシは、憧れて憧れて「こういう雰囲気の曲を書きたい。だから、エッセンスを拝借させて下さい」と、尊敬するアーティストの人達に届かなくても胸の中でつぶやき、曲を書いたりする。

 もし誰かが「またあいつ、○○○○の×××をパクってるぞ」と思うなら、ほんとに第一線で活躍して、ほんとに大成功してから言うべきだと、ワシは考えておる。


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日本語音楽の行方


 考えたのだが、欧米と日本の音楽業界における一番の違いはなんだろうか。歌詞(言語)が違うというのは当然なので、置いておく。ワシが思うに、アーティスト名、特にバンド名の扱いというものが洋の東西で大きく違っている気がする。

 例えば、思いつくものを挙げてみる。「ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース」という有名なアメリカのロックバンドがある。名前からしても、「いかにもロックです!」という匂いが感じられて格好いい。これの他にも、「ボーカル名&バンド名」という形式は、海外では数多く存在している。

 ところが、日本ではどうだろう。同じ形式を考えてみても、「内山田洋とクールファイブ」。これはどう聞いても“ムード歌謡”だ。ロック系アーティストを探せば「カルメン・マキ&OZ」、「KENJI & THE TRIPS」みたいなものはあったが、どうしても「日本語ロック」という香りはつきまとう。やはり「誰それ&バンド名」というものは、日本においては根付かないものなのだろうか。

 だが、ワシが一番気になっているのは、3人編成バンドの名称の事である。「EL&P(エマーソン・レイク&パーマー)」などがその代表格だと思うが、この形式だけは、日本の音楽シーンを見渡しても、類似するものがほとんどない。せいぜい「ジョニー・ルイス&チャー(後にピンク・クラウドと改名)」ぐらいのものだろう。ワシが知らないだけかも知れないが。

 ワシが音楽系の専門学校に在籍していた時、仲間が学園祭でバンドを組む事になった。3人編成のロックバンドだったのだが、大変にインパクトのある名前だった。その名も「##と△▽と@@」(一応伏せる)。

 やっている事は「EL&P」と同じはずなのに、この落差は一体なんなのだろう。日本人の名前を日本語で、なおかつ連名で書くのは、なんだかめちゃめちゃ格好悪い気がしてならない。でも、仲間内ではバカ受けしていたが。

 やはり日本人なら、日本人なりの独自性を追求するのが一番だと思う。単に欧米の模倣をし続けているだけでは、いつか追い付くことはできても、追いこすことはできないだろう。なんでもかんでも英語だ、横文字だと、欧米の尻を追いかけるばかりで、日本人としてのプライドはないのか。日本語ロック、日本名バンドのあり方というのは、もっと意外なところに存在しているのではないか。ワシはそう考える。

 本当に世界に向けて、日本人として、自分たちのメッセージを伝えようと本気で思っているなら、根本的な頭脳改革をする必要があるように思う。ワシは、誰も考えつかないような斬新な、日本人アーティストの出現を心待ちにしている。


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ハゲ保険


 ワシは、ハゲたくない。自分がいつかハゲたら…と考えると、すごく怖い。幸いにもワシの親族にハゲはいないようなので、あまり心配はしておらんのだが。

 あっさり言い切らせていただくが、ハゲは、不可抗力だ。いろいろな育毛剤・養毛剤を使ってみたところで、ハゲる人はハゲる。そこで考えたのだが、「ハゲ保険」というものを作ってみたらどうだろう。とりあえず検索してみたが、そのようなものは見つからなかったので、本当に存在はしておらんようだ。

 デブは、お金をかけなくたって痩せる事ができる。スポーツクラブに入会したり、運動器具やダイエット食品を買うのなら仕方がないが、最低限、摂取カロリーを減らして運動すれば痩せる。お金はかからない。でもハゲは、逆立ちしてみたところで毛が生えてくるわけではない。市販の発毛促進剤などで頭皮をマッサージしたり、ひじきやわかめを食べたりという民間療法はあるだろうが、結局お金をかけて増毛したり、かつらを作らなくてはどうしようもない。

 だったらいっそのこと保険を作ってしまえば良いと、ワシは思う。若くしてハゲる人は二十代半ばで前線が後退してくるので、国民年金と一緒で、二十歳になったら加入するものとする。掛け捨てでもいいだろう。そして頭が薄くなってきたら、保険金が下りる。頭皮の面積に対して何割減ったかによって金額は変わるとしよう。その下りたお金で、増毛/植毛するなり、かつらを作るなりすればいい。

 …と、ここまでは半分冗談で書いてきたが、ハゲは男性だけの問題ではない。逆に女性にとって深刻な悩みだと思う。極論だが、男性の場合、髪の毛一本ないツルっぱげになってしまっても、「そういう人」で済まされるが、女性の場合そうはいかない。出家するなら話は別だが。
 昨今は、ストレスなどで髪が薄くなってしまい、悩んでいる女性も多いと聞く。やはりハゲ保険は必要なのではないか。

 もしも、どこかの保険会社が本当に「ハゲ保険」を作ったなら、ワシはたぶん加入してしまう……かも知れない。いや正味の話、保険会社勤務の方、このコラムを読んでいたら(いないと思うが)、是非ともご検討頂けないでしょうか。きっと儲かると思うのですが…。


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聖なる夜に納豆食って


 実を申せば、ワシはこの秋口から体調を崩しておる。持病の腰痛や背痛がひどく、日によっては買い物に出かけるのさえ億劫になるほどだ。仕方がないので、少しでも痛みの軽い日に自転車で買い物に出かけ、食料などを買いだめしている。
 家にいても気分がすぐれない事が多々あり、買ってきた食料品が床に投げ出されていても、もうほったらかしになっている。

 さて、事の重大さに気づいたのは、クリスマスイブを明日に控えた12月23日、土曜日。
 整形外科の治療で身体が軽くなったワシは、買っておいたウーロン茶や缶詰などを片づけていた。すると、買い物袋の中から身に覚えのないものが出てきた。納豆だった。それも3個入り×2パック=6個

 そういえば…!と気がついた。とりあえず身体には良さそうだし、太らないだろうという、それだけの理由で数日前に買いだめをしていたのだ。あわてて賞味期限を確認すると、「12月24日」とある。ちょっと待て、今は23日の午後4時だぞ。明日中に6個の納豆を食べきれというのか。

 まあ納豆ぐらい、一個100円もしないものだから、食べられなかったらそれまでなのだが、せっかくの食べ物を無駄にするのは忍びないし、作ってくれた方に失礼だ。
 実は今、このコラムを書いている後ろでは、炊飯器が火を噴いている。急げ!ワシ!クリスマスまでに6個の納豆を食べきるのだ!

 さあて、今夜から納豆ライフだ。食べて、食べて、食べまくるぞ。待ってろ、納豆! 腐るな、納豆!…って、納豆はもう腐っている食べ物だがな。

 しかし、なんちゅうクリスマスだ。聖なる夜に、納豆食うかよ。普通。ま、それはそれで良いか、ワシらしくて。とほほ。
おまけ:「聖なる夜に納豆食って」

♪カラシ入れる人も ネギをきざむ人も 鼻にくる人も 卵入れる俺も
 かきこむ飯も 消化してる腹も メリーメリークリスマス
 Tonight's Dinner is Natto!
 大切な米も なくなってく米も よくはたらく炊飯器 はたらけない俺
 美味く食べるメシも おかわりする俺も メリーメリークリスマス
 Tonight's Dinner is Natto!
 Tonight's Dinner is Natto! all right....


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